Volume 1, 2025

  • 脱炭素社会で多様化するコンクリートの微細組織の解明に向けた放射線技術の開発

    建設主幹材料であるコンクリートは、人類が扱う物質として、水の次に膨大な量になります。地球規模で環境影響が大きいコンクリートに対して、脱炭素社会の実現に向けて、強度や耐久性を損なうことなく、製造に伴う二酸化炭素などの発生を抑制する新しいコンクリートの開発に向けて、先進的放射線技術を用いた超微細レベルから研究します。

  • フォノニック結晶における超高周波数バレー偏極モードのイメージング

    2次元トポロジカルフォノニック結晶中のサブGHz音響波を光学的測定と数値シミュレーションにより調べた。試料は、渦状の位相発展パターンを持つバレー偏極モードを持ち、鏡像関係にある二つの構造の接合面には局在導波路モードが現れる。測定では急峻な曲がりを持つ接合面においても高効率の伝播が観測され、トポロジカルに保護された伝播が実現されている。

  • 臨界実験を用いたデータ同化手法の実用化に資する次元削減スキームの構築

    核反応断面積の不確かさ(共分散行列)は原子炉の安全評価上重要なパラメータが現実的な範囲を評価するために用いられ、近年では臨界実験から得られた知見を取り入れるため、データ同化の適用が重要であるとされている。一方で、データ同化適用後は複雑な相関成分を有する密行列になることにより計算コストが増大することが実用上の課題となっている。本プロジェクトでは、これを解決するための次元削減スキームを構築する。

  • 物体の沈下運動観測による固体4Heの量子塑性と超固体性の探索

    固体ヘリウムは量子固体と呼ばれ、強い量子効果を受けて容易にかつ急速に変形するなど、特異な振る舞いを見せる。本研究では固体ヘリウム中を沈み込む物体の運動を精密に観測することで、固体の中の欠陥に期待される局所的な超流動流(粘性のない液体の流れ)の存否をはじめとする、量子固体特有の性質として期待される新奇な塑性(非可逆な変形)現象と、固体と超流動が共存した超固体性の探究を行う。

  • 種々の炭素質物質から調製した活性炭の細孔性状とCO₂吸着性能

    炭素源としてバイオマスと石炭、窒素ソースとしてメラミン、賦活剤としてK₂CO₃を用いて活性炭を製造したところ、低炭化度かつ低灰分の炭素源ほど細孔が発達し、その表面積とミクロ細孔容積がCO₂吸着能に影響を与えることを明らかにした。また、CO₂吸着に最適なミクロ細孔径は0.5~1.2 nmであることが示された。この結果は、高CO₂吸着能を持つ活性炭の製造指針の確立に繋がると期待される。

  • 骨梁衝撃強さとマイクロアーキテクチャに基づく海綿骨動的強度特性の発現機序

    骨粗鬆症では軽微な衝撃で海綿骨部位に骨折が多発する。骨量だけでなく骨梁の衝撃強さとマイクロアーキテクチャが動的強度を決めると仮定し、これを実験的に解明することで骨折リスクの診断・制御を目指す。

  • 生体骨模倣多孔質構造による衝撃吸収・耐久性に優れた3Dプリント可能な頭部保護部材の開発

    生体内で力学的に最適化された生体骨構造に基づき発明した海綿骨模倣構造を用いて、繰り返し衝撃も吸収可能な優れた衝撃吸収・耐久性を持つ3Dプリント可能な新しい頭部保護部材を開発する。身体保護具や精密機器輸送用緩衝材にも展開できる。

  • 塩素化と酸化を組み合わせた乾式処理による使用済みリチウムイオン電池正極材モデルからのLi,Ni,Co,Mnの選択的分離

    使用済みリチウムイオン電池正極材(LiNiO₂、LiCoO₂、LiMn₂O₄、及び、それらの複合組成)から有価金属(Li、Ni、Co、Mn)を選択的に回収する技術を開発した。具体的には、LiNiO₂、LiCoO₂及びLiMn₂O₄を600℃まで塩素化処理した後、1300℃まで空気酸化するとLiとNi、Co、Mnを選択的に分離できることを見出した。本論文は、カナダのAdvances in Engineering選考委員会により、Key Scientific Articleに選出され、高く評価されている。

  • 超流動滴下系が見せる新奇な連続時間結晶性の解明

    古典粘性流体の滴下周期はカオスの影響で幅広く分布するのに対し、超流動4He液体の滴下周期は流入量が変化しても整数で指定される一定値に離散化した。この頑強な離散化が連続時間結晶の実現であることを、流入量相図、温度相図、壁形状と次元性、時間領域フォノン励起などの観点から明らかにする。

  • 精密制御触媒で実現するCO₂からのBTXワンパス合成

    CO₂資源化はカーボンニュートラル達成に不可欠であり、なかでもBTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)は、脱化石社会における重要な基礎化学品です。本研究では、東京大学、北海道大学、出光興産株式会社のこれまでの共同研究成果を活用し、触媒構造を原子レベルで精密に制御します。これにより、CO₂からのBTXワンパス合成を可能とする工業応用に耐える触媒プロセスの確立を目指します。