Featured Research
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深層学習を用いた衝撃弾性波法によるコンクリート中のひび割れ検出
コンクリート構造物における内部ひび割れ検出を目的として、インパクトエコー法にAIを統合した手法を提案している。FFTデータを用いた教師あり深層学習により損傷レベルを分類するとともに、実構造物への適用を考慮し、オートエンコーダによる教師なし学習により、教師データの構築を不要とした損傷検知を可能とした。
Jeero Pandum, 橋本勝文, 杉山隆文, Wanchai Yodsudjai
フッ素系難燃剤の難燃性能に対する流れの滞留時間の影響:CH₂F₂とCH₄の吹き消え限界の比較
本研究では、微小重力環境下において ETFE に代表されるフッ素樹脂の可燃性が増大する要因を明らかにすることを目的として、ハイドロフルオロカーボン(HFC)燃料および炭化水素(HC)燃料の燃焼特性を詳細化学反応の観点から解析した。その結果、CH₂F₂ は CH₄ と異なり、吹き消え限界の酸素濃度に対する感度が極めて小さいことが示された。CH₂F₂ 火炎では火炎温度が低く、H および OH ラジカルの生成が抑制されており、これは HF 生成経路が支配的となることでラジカル連鎖反応が阻害されるためである。一方、CH₂F₂ は吹き消えを起こしやすい特性を有するものの、高い断熱火炎温度を維持するため、十分な滞留時間が確保されれば低酸素濃度条件下でも燃焼が成立することが明らかとなった。
土壌・フルボ酸画分・粘土腐植複合体の固体-励起蛍光マトリクス分光法:凝集に伴う蛍光極大のレッドシフトに関する考察
土壌中の有機物(腐植物質)分析に必須なアルカリ抽出操作によるアーティファクトが問題視され、抽出に基づく腐植物質研究の正当性が揺らいでいる。本研究では腐植物質標準試料および粘土との複合体に対し、非抽出・非破壊な固体-励起蛍光マトリクス分光法(SPF-EEM)を世界で初めて適用し、蛍光極大波長が溶液・複合体・凝集体などの状態に応じてシフトしうることを見出した。
中屋佑紀、廣瀬貴志、田森龍一、藤嶽暢英、中嶋悟、山村寛、佐藤久
プラズマ支援水電解反応による水素生成技術の開拓
プラズマと水が接触する電解反応である“接触グロー放電”では、ファラデー効率が1を超える現象が報告されているが、その反応機構は未解明である。水中に安定な直流プラズマを生成するプラズマ駆動電解法を開発し、通常の電解と比較して水素発生量が著しく増加する現象のメカニズムを解明し高効率な水素製造技術の確立を目指す。
科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓) 2025.6.27~2029.3.31
Selected Articles
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コンクリート中の鉄筋腐食の検出を目的とした犠牲陽極材を用いたMEMS環境振動センサ
本研究は、MEH技術を用いたMEMS型監視システムにより、RC構造物における塩害による腐食の起こりやすい領域を検出する手法を提案するものである。犠牲陽極金属板をデバイスの一部に組み込むことで、自立発電による鉄筋腐食の進行を検知可能とし、外部電源を必要としない自己駆動型モニタリングを実現する。
Nicharin Nithimethaporn, 橋本勝文, 三屋博幸, 芦澤久幸, 石黒巧真, Wanchai Yodsudjai
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コンクリート中の鉄筋腐食に伴う劣化検出を対象とした教師なし学習によるAI駆動型音響解析
鉄筋コンクリート構造物の安全性確保には効率的な点検が重要である。本研究は、専門知識に依存しがちな打音検査にAIを適用し、教師なし学習により損傷を評価する手法を提案した。実験結果から、算出された異常指標が鉄筋腐食やひび割れの進行と対応することを示し、初期損傷検知への有効性を確認した。
Nopphanan Phannakham, 橋本勝文, 佐藤康彦, 上田尚志
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グラフベースネットワークとクラックアテンションを用いたマルチモジュール深層学習によるLiDAR点群からのトンネル覆工ひび割れ抽出
本研究は、鉄道トンネル覆工のひび割れを効率的に検出するため,LiDAR点群データを直接利用する深層学習手法「PointCrackNet」を提案している。グラフベース畳み込みやアテンション機構を組み合わせることで微細なひび割れを高精度に抽出し,大規模実データによる検証でも既存手法より優れた性能を示しており,トンネル点検の自動化とインフラ維持管理の高度化に貢献する成果である。
Shanpeng Liu, 磯部公一, Junling Si, Diyuan Li, Daoju Ren
Construction and Building Materials Volume 494, 2025, 143383
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鋼材腐食と凍結融解の複合作用がコンクリート中の異形鉄筋の引抜き性状に及ぼす影響
本研究は、積雪寒冷地のコンクリート構造物に多く生じる鉄筋腐食と凍結融解による複合劣化について、作用順序とひび割れ履歴が鉄筋の付着性能に及ぼす影響を、初めて体系的に検討したものである。特に、先行ひび割れが劣化を著しく加速することが示され、耐久性評価には損傷履歴の考慮が不可欠であることを明らかにした。
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3D-RBSMによる3Dプリンティングコンクリートの異方性圧縮挙動及び引抜性能のメソスケール解析
本研究は、3D剛体バネモデル(RBSM)を用い、鉄筋入り3Dプリンタコンクリートの異方性を分析しました。解析の結果、積層界面の空隙が性能に影響し、積層平行方向の載荷は高い圧縮・付着強度を示す一方、垂直方向は界面の弱部により性能が低下することが判明しました。本成果は、構造最適化に向けた予測枠組みを提供します。
Jiaxu Yao, Jie Luo, Minghong Qiu, and Kohei Nagai
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置換基効果が及ぼす電子環状反応への影響: 分子振動のインパルシブ励起によって誘起される α-フェランドレンの超高速開環
光で環状分子が直線構造に変わる反応は生命や材料機能に重要です。本研究では、α-フェランドレンという香料に用いられる分子において、置換基が開環反応をどう変えるかを明らかにしました。超短光パルスにより分子振動が周期的に励起され、反応は一気に進まず段階的に進行します。置換基の大きさと重さが反応経路を制御することを示しました。
Zhiyi Zhou, 斉田謙一郎、峯岸佑典、武次徹也、関川太郎
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40–70 eV 領域の M吸収端 XMCD のためのパラジウム鏡による広帯域位相遅延
磁性材料はデータ記録や次世代電子技術に不可欠です。本研究では、磁性を元素ごとに調べるための特殊な光を、パラジウム鏡で効率よく作れることを示しました。従来より安定で構造も簡単になり、複数の磁性元素を同時に観測できます。新しい磁性材料研究を支える重要な技術です。
Furkan Aksay, 関川太郎
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確率的相関を考慮したネットワークにおける信頼性経路探索問題:ハイパーグラフ上の線形計画法問題
NP困難な問題として知られる信頼性経路探索問題は、本研究で開発したハイパーグラフ上では、容易に求解可能な線形計画法問題として表現できることを世界で初めて証明した。未だ解決していない数学の7大難問であるP vs NP問題に対して重要な知見を与える研究である。
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純ヘリウム直流グロー放電の陽極表面上で観測された自己組織化発光パターン形成
大気圧直流グロー放電生成時、陽極表面に観測される発光の自己組織化現象のメカニズム解明のために純He環境で気圧を変化させながら発光パターンを調査した。その結果発光パターンは圧力pと電極間距離dの積pdが高いときに現れることがわかった。今後、数学分野で自己組織化現象を得る手法である反応拡散系へ繋げていく。
宮崎俊明、Jan Kuhfeld、佐々木浩一、白井直機
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基本解近似解法を用いたEringenによる非局所弾性体のSH波動散乱解析
Eringenによる非局所弾性体は、古典弾性論では取り扱いが困難な現象を解析可能にする力学モデルである。本研究では、メッシュフリー法のひとつである基本解近似解法を用いて、非局所弾性体に対する波動散乱解析を行った。非局所弾性体に特有な表面力作用素の解析表現を導出し、超音波非破壊検査において重要となる散乱特性を評価した。
古川 陽, 丸山 泰蔵, 斎藤 隆泰, 廣瀬 壮一, Davinder Kumar, Dilbag Singh, and Sushil K. Tomar
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ポリマー電解質燃料電池における水素ガスの循環による軽水素濃縮
重水素分離を行うため、ガス循環システムを備えた高分子電解質燃料電池(PEFC)が用いられた。水素ガスタンクをガス循環ラインに組み込むことで、大幅なH濃縮が達成された。燃料電池の発電中、水素ガス中のH濃縮が進み、高い分離係数が得られた。これは気相化学交換反応による分離効率が向上が考えられた。
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AIを利用した活性汚泥の静止画像・動画解析による沈降性評価
下水処理の最終行程では、汚濁成分の吸着・分解を担う微生物の塊「活性汚泥」の沈降性が重要である。本研究では、経営面、熟練技術者確保といった人材面の問題を抱える地方や発展途上国の処理場の効率化に貢献すべく、安価なデジタル顕微鏡による活性汚泥画像やスマートフォンのカメラ機能による活性汚泥沈降動画をAIも活用して解析する、導入コストの低い沈降性能の診断手法を提案した。
中屋佑紀、杉野魁、石崎翔大、平野麗子、野田周平、茂庭忍、平岡由紀夫、佐藤久
Selected Projects
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責任ある鉱物調達の実現に向けたEthical Mining(倫理的鉱業)技術の開発~ブロックチェーンがもたらす未来の鉱山開発~
北海道大学の岡田助教はJSTさくらサイエンスの支援を受け、エチオピア・アクスム大学の教員・学生8名を招へいする。ブロックチェーンとGISを用い、責任ある鉱物調達に向けた透明性確保や環境配慮型資源開発の新たな技術的枠組みを共同研究や演習、成果発表を通じて検討する。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 国際青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプログラム) 2025 年度一般公募プログラム Bコース 2026.2.4~2026.2.18
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パッシブサンプリングとリン酸酸素安定同位体比分析による湖沼底泥からのリン溶出評価
富栄養湖では湖水中のリン濃度が下がらないことが問題となっている。本研究ではリンがどこから湖水へ供給されているのかを明らかにするため、パッシブサンプラーとリン酸酸素安定同位体比分析を活用する。これにより今までは評価できなかった湖沼底泥からの供給も明らかにする。本研究は湖沼水環境の評価と保全に活用が期待される。
羽深昭,石田卓也,佐野航士
公益財団法人住友財団2025年度環境研究助成(一般) 2025.11.01~2026.11.30
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パーム油製造廃棄物を用いた Bio-CNG 製造のための発酵 プロセスおよび CO₂選択吸着剤の開発
本研究はマレーシアのパーム油産業から排出される副産物であるパーム油廃液および空果房(くうかぼう)を有効活用し、再生可能エネルギーであるBio-CNG(バイオ圧縮天然ガス)の生産と精製を高度化することを目的とする。具体的には、日本側は嫌気性消化プロセスの開発および運転支援に加え、微生物群集構造の解析や機械学習を活用したデータ駆動型モデリングを行い、プロセスの安定化やCO₂吸着材性能の迅速かつ精密な最適化に貢献する。マレーシア側は空果房の前処理条件や発酵条件の最適化、空果房由来バイオ炭を用いたガス分離技術の開発・評価を担当する。両国のチームによる共同研究を通して、マレーシアにおける脱炭素型エネルギー社会の実現に向けた再生エネルギー技術基盤の構築が期待される。
押木守、アデリン・セ・メイ・ チュア
科学技術振興機構(JST) 日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS) 国際共同研究 2026.1〜2028.12
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