Volume 2, 2026
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置換基効果が及ぼす電子環状反応への影響: 分子振動のインパルシブ励起によって誘起される α-フェランドレンの超高速開環
光で環状分子が直線構造に変わる反応は生命や材料機能に重要です。本研究では、α-フェランドレンという香料に用いられる分子において、置換基が開環反応をどう変えるかを明らかにしました。超短光パルスにより分子振動が周期的に励起され、反応は一気に進まず段階的に進行します。置換基の大きさと重さが反応経路を制御することを示しました。
Zhiyi Zhou, 斉田謙一郎、峯岸佑典、武次徹也、関川太郎
パーム油製造廃棄物を用いた Bio-CNG 製造のための発酵 プロセスおよび CO₂選択吸着剤の開発
本研究はマレーシアのパーム油産業から排出される副産物であるパーム油廃液および空果房(くうかぼう)を有効活用し、再生可能エネルギーであるBio-CNG(バイオ圧縮天然ガス)の生産と精製を高度化することを目的とする。具体的には、日本側は嫌気性消化プロセスの開発および運転支援に加え、微生物群集構造の解析や機械学習を活用したデータ駆動型モデリングを行い、プロセスの安定化やCO₂吸着材性能の迅速かつ精密な最適化に貢献する。マレーシア側は空果房の前処理条件や発酵条件の最適化、空果房由来バイオ炭を用いたガス分離技術の開発・評価を担当する。両国のチームによる共同研究を通して、マレーシアにおける脱炭素型エネルギー社会の実現に向けた再生エネルギー技術基盤の構築が期待される。
押木守、アデリン・セ・メイ・ チュア
科学技術振興機構(JST) 日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS) 国際共同研究 2026.1〜2028.12
パッシブサンプリングとリン酸酸素安定同位体比分析による湖沼底泥からのリン溶出評価
富栄養湖では湖水中のリン濃度が下がらないことが問題となっている。本研究ではリンがどこから湖水へ供給されているのかを明らかにするため、パッシブサンプラーとリン酸酸素安定同位体比分析を活用する。これにより今までは評価できなかった湖沼底泥からの供給も明らかにする。本研究は湖沼水環境の評価と保全に活用が期待される。
羽深昭,石田卓也,佐野航士
公益財団法人住友財団2025年度環境研究助成(一般) 2025.11.01~2026.11.30
責任ある鉱物調達の実現に向けたEthical Mining(倫理的鉱業)技術の開発~ブロックチェーンがもたらす未来の鉱山開発~
北海道大学の岡田助教はJSTさくらサイエンスの支援を受け、エチオピア・アクスム大学の教員・学生8名を招へいする。ブロックチェーンとGISを用い、責任ある鉱物調達に向けた透明性確保や環境配慮型資源開発の新たな技術的枠組みを共同研究や演習、成果発表を通じて検討する。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 国際青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプログラム) 2025 年度一般公募プログラム Bコース 2026.2.4~2026.2.18
AIを利用した活性汚泥の静止画像・動画解析による沈降性評価
下水処理の最終行程では、汚濁成分の吸着・分解を担う微生物の塊「活性汚泥」の沈降性が重要である。本研究では、経営面、熟練技術者確保といった人材面の問題を抱える地方や発展途上国の処理場の効率化に貢献すべく、安価なデジタル顕微鏡による活性汚泥画像やスマートフォンのカメラ機能による活性汚泥沈降動画をAIも活用して解析する、導入コストの低い沈降性能の診断手法を提案した。
中屋佑紀、杉野魁、石崎翔大、平野麗子、野田周平、茂庭忍、平岡由紀夫、佐藤久
ポリマー電解質燃料電池における水素ガスの循環による軽水素濃縮
重水素分離を行うため、ガス循環システムを備えた高分子電解質燃料電池(PEFC)が用いられた。水素ガスタンクをガス循環ラインに組み込むことで、大幅なH濃縮が達成された。燃料電池の発電中、水素ガス中のH濃縮が進み、高い分離係数が得られた。これは気相化学交換反応による分離効率が向上が考えられた。
基本解近似解法を用いたEringenによる非局所弾性体のSH波動散乱解析
Eringenによる非局所弾性体は、古典弾性論では取り扱いが困難な現象を解析可能にする力学モデルである。本研究では、メッシュフリー法のひとつである基本解近似解法を用いて、非局所弾性体に対する波動散乱解析を行った。非局所弾性体に特有な表面力作用素の解析表現を導出し、超音波非破壊検査において重要となる散乱特性を評価した。
古川 陽, 丸山 泰蔵, 斎藤 隆泰, 廣瀬 壮一, Davinder Kumar, Dilbag Singh, and Sushil K. Tomar
純ヘリウム直流グロー放電の陽極表面上で観測された自己組織化発光パターン形成
大気圧直流グロー放電生成時、陽極表面に観測される発光の自己組織化現象のメカニズム解明のために純He環境で気圧を変化させながら発光パターンを調査した。その結果発光パターンは圧力pと電極間距離dの積pdが高いときに現れることがわかった。今後、数学分野で自己組織化現象を得る手法である反応拡散系へ繋げていく。
宮崎俊明、Jan Kuhfeld、佐々木浩一、白井直機
確率的相関を考慮したネットワークにおける信頼性経路探索問題:ハイパーグラフ上の線形計画法問題
NP困難な問題として知られる信頼性経路探索問題は、本研究で開発したハイパーグラフ上では、容易に求解可能な線形計画法問題として表現できることを世界で初めて証明した。未だ解決していない数学の7大難問であるP vs NP問題に対して重要な知見を与える研究である。
40–70 eV 領域の M吸収端 XMCD のためのパラジウム鏡による広帯域位相遅延
磁性材料はデータ記録や次世代電子技術に不可欠です。本研究では、磁性を元素ごとに調べるための特殊な光を、パラジウム鏡で効率よく作れることを示しました。従来より安定で構造も簡単になり、複数の磁性元素を同時に観測できます。新しい磁性材料研究を支える重要な技術です。
Furkan Aksay, 関川太郎